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熊本地方裁判所 昭和34年(行)21号 判決

原告 馬場昇 外六名

被告 熊本県教育委員会

主文

原告等の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は「被告が昭和三十三年十二月二十二日付をもつて原告等に対してなした各戒告処分が無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、右請求が認容されない場合は「右各戒告処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、請求原因として次のとおり述べた。原告岡村を除くその余の原告等はいずれも現在、高等学校教諭であつて、原告馬場は昭和二十五年四月一日以降、熊本県立八代工業高等学校に、原告水谷は同二十七年十月三十一日以降、熊本県立熊本商業高等学校に、原告長谷川は同二十二年五月三十一日以降、熊本県立玉名高等学校に、原告鶴は同二十二年九月十五日以降、熊本県立山鹿高等学校に、原告森崎は同三十年四月一日以降、熊本県立熊本高等学校に、原告池松は同二十二年八月三十一日以降、熊本県立済々黌高等学校に各勤務する地方公務員であり、且つ熊本県立高等学校の教職員によつて組織された熊本県高等学校教職員組合(以下熊高教組と略称する)において、原告馬場は執行委員長、原告鶴は書記長、原告長谷川は給対部長、原告池松は文化情宣部長、原告森崎は組織法制部長、原告水谷は副委員長たる役職にあつたものであり、原告岡村は昭和二十四年三月三十一日以降、同三十四年九月三十日退職に至る迄、熊本県立天草高等学校に勤務していた地方公務員で前記熊高教組の副委員長の役職にあつたものであるが、被告は昭和三十三年十二月二十二日、各原告に対し「原告等が昭和三十三年五月二十六日から同年六月二十二日までの間に、被告所管の県立諸学校において教職員に対し、宿日直を拒否するよう、そそのかしあおつた」との理由をもつて、地方公務員法第三十七条第一項第二十九条第一項第一号の規定に基き、戒告処分に付する旨の意思表示をした。

しかしながら右処分はいずれも以下の如き明白にして且つ重大な瑕疵があるから無効たるを免れない。即ち

一、被告が処分の根拠とする地方公務員法(以下地公法と略称する)第三十七条第一項の規定は憲法第二十八条第三十一条第二十一条第十八条に違反し無効であるから、かかる無効の規定に基いてなされた前記処分は無効である。

(一)、憲法第二十八条が保障する地方公務員の団体行動権は勤労者の生存権を確保するために認められた奪うことのできない基本的人権であつて、仮に右権利の行使を制限しなければならない場合があるとしても、これらを制限する場合には、その代償として地方公務員が団体行動権を有することにより受けると同等以上の保障がなされている場合に限る。しかるに地方公務員の給与、勤務条件等に関する地公法第二十四条、第二十六条、第四十六条、第四十七条等は地方公務員に対する有効な保障とはならないので結局地公法第三十七条は勤労者たる地方公務員から有効な代償なくして基本的人権たる団体行動権を奪つたことに帰し無効である。

(二)、憲法第三十一条によつて宣明されている罪刑法定主義は、行政上の懲戒処分にも適用さるべき原則であるところ、地公法第三十七条第一項後段は、同法第六十一条第四号と照し合わせると、地方公務員の争議行為等を企て、その遂行を共謀し、あるいはあおりそそのかす所為を独立の違法類型として規定していることが明らかである。しかしながら、右第三十七条第一項後段に該当する行為でも、その目的とする争議行為が結局実行されなかつた場合は、何らの意味もないものに帰するに拘らず、同規定がかかる場合の所為をも違法として、これに対して不利益処分を課しうるとしていることは甚はだ不当であるばかりでなく、右規定の法文は極めて瞹昧であつて、いかなる行為が禁止の対象とされているかを判断する基準となし得ないため、法律に違反しないと信じてなした行為についてまでも不利益処分を受ける危険性があるから、右規定は公権力による不当な処分から人権を保護すべき罪刑法定主義の原則に違反し無効である。

(三)、地公法第三十七条第一項前段の行為はそれが個々の者により行われる限り処罰されない。しかるに右処罰されない行為を企て、その遂行を共謀し、そそのかしあおつた者は、同法第六十一条第四号により処罰されることになつている。してみれば

(1)  地公法第三十七条第一項後段の規定が、争議行為を企て、その遂行を共謀することを禁止しているのは、かかる行為が多数人によつて行われることを違法とする観念に基くもので、集会結社の自由を保障した憲法第二十一条に違反する。

(2)  又、右の如くそそのかしあおる行為を違法とすることは、とりもなおさず、その手段である文書、図画及び言論等による表現活動自体を禁止するものであり、憲法第二十一条が保障する表現の自由を侵害するものであるから、右規定は無効であるといわざるを得ない。

(四)、更に地公法第三十七条第一項後段、第六十一条第四号の規定が、地方公務員の争議行為を遂行せんとする行為について、刑罰をもつて対処していることは争議行為の本質が労働提供拒否にあることにかんがみ地方公務員に対して、その意に反する強制労働を課するものというべきであるから、苦役からの自由を保障する憲法第十八条に違反し無効である。

二、仮りに地公法第三十七条第一項の規定が、憲法に違反しないとしても、宿日直は教員の職務ではないから、教員に対してこれを拒否するよう勧告、慫慂するが如き行為は、地公法第三十七条第一項の規定に該当しないことは勿論、何ら不当な行為とはいえないから、右の如き行為をなしたとの理由によつてなされた前記懲戒処分は無効である。

(イ)  宿日直が教員の職務でない理由は次の通りである。即ち、教員の職務は学校教育法第二十八条第四項の規定により、小学校教諭は児童の教育を掌ると明示され、同法第五十一条第七十六条によつて高等学校、盲学校、聾学校に各準用されている。しかして教育基本法によつて教育権の独立が宣言されていること、及び教員が教育の実践だけにも過重労働を強いられている現状にかんがみれば、教員は教育活動にのみ専念すべき地位を保障されているものであるというべきところ、学校における宿日直は、校舎設備、備品等の保全を主目的とするもので、これが教育活動と異質の仕事であることはいうまでもないから、業務の内容自体からして、宿日直が教員の職務でないことが明らかである。もつとも学校教育法は、校長は校務を掌り職員を監督する旨規定しているけれども、右は校長が学校において勤務する時間内の職務を規定したものであることは当然の事理であるから、校長はその勤務時間外の仕事である宿日直までをも管掌するものではないというべきである。仮りにそうでないとしても校長は一般教員の先輩者ないし助言者たる地位にあるにすぎないから、教員に対して、宿日直勤務を命令するが如き権限は有しないものである。このことは高等学校以下の校長と、本質的にその職務権限を同じくする大学の学長が所属教授に対して宿日直勤務を命じ得ないことからしても、容易に肯認されるところである。

しかして学校教育法によれば学校には教員の外に事務員をおくと定められているから、教育活動以外の用務はすべて事務職員に分担させる立前であるというべく、また地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条により、教育委員会が所轄学校の校舎その他の施設及び教具等を管理する職務権限を有するから、同委員会において警備員を雇用し、これに宿日直を行わせるべき義務があるというべきである。

以上の次第で教員に対し、宿日直に従事すべき義務があるとしてこれを強制することは到底許されないものである。

(ロ)  また教員に対して宿日直勤務を命ずることは、労働基準法第三十二条が保障する労働時間の制限に違反することからしても許されない。もつとも同法第四十一条第三号の規定によれば監視または断続的業務に従事する者については、必らずしも右労働時間の制限が適用されないことになつているけれども、右は監視または断続的労働が本来の業務である場合だけに限られるもので、教員の如く他に本務を有する者に対し更にかかる勤務を命ずることは、過重労働禁止の法目的に違反するから、右例外規定に含まれないと解すべきである。次に同法施行規則第二十三条の規定によれば日直または宿直の勤務で断続的な業務については所定の許可を受けることを条件として他に本務を有する者に対しても宿日直勤務を命じ得ることとしているけれども、右規定は法律上の根拠なく、規則をもつて労働時間の延長を定めたもので憲法第二十七条第二項に違反し無効である。

三、原告等には被告の主張するが如き懲戒理由に該当する事実はないから、前記処分は無効である。即ち被告が原告等に対する懲戒事由として主張する事実関係中被告所管の県立諸学校の校長が所管教職員を宿日直勤務に従事させることについて県人事委員会の許可を受けていること、原告馬場が被告主張の日時組合支部長に対し主張内容の指令を発したこと、並に被告主張の県立諸学校の教職員が主張の期間宿日直を拒否したことは認めるがその余は争う。教職員は原告馬場の指令と関係なく自発的に宿日直を拒否したもので原告等は宿日直拒否闘争を企画したものでないことは勿論、これを拒否するようあおりそゝのかしたものでもない。

仮りに原告等に形式上、被告主張のような言動があつたとしても、原告等は組合の執行機関として、組合大会において決定された運動方針に従い、正当な組合活動をなしたにすぎないものであるから、かかる行為を違法としてなされた前記懲戒処分は、組合組織を否定するもので、地方公務員法第五十六条に違反し無効である。

四、仮に原告等の行為が正当な組合活動と認められないとしても地公法第三十七条第一項は、憲法第二十八条の保障する勤労者の基本的人権を制限するものであるから、同条そのものが憲法に違反しないからと言つて妄りに適用できるものではなく、地方公務員の争議行為が地方住民の利益に明白かつ現在の危険を生ぜしめた場合に限り、これを適用して違反者を処分し得るものにすぎないというべきである。ところで教職員が宿日直を拒否したからといつて、地方住民の教育を受ける権利に対し何らの危害をも及ぼすものでないから、右宿日直拒否をあおりそそのかした原告等に対して地方公務員法第三十七条第一項を発動した本件処分は、憲法第二十八条に違反し、無効たるを免れない。

五、仮りに以上の主張がすべて認められないとしても、熊本県立諸学校の教職員は二百円という、低い手当の下で、奉仕的に宿日直を続けてきたものであるに拘らず、被告は教職員の誠意を無視して、一方的にこれをも勤務評定の対象とするに至つたので、原告等は右の如き理不尽な措置の撤回を求めるために、被告主張の如き行動を行つたにすぎないもので、かかる行為に対して、懲戒権を発動することは、他の正当な組合活動までを弾圧する意図の下になされたものというのほかなく雇用契約における信義誠実の原則に甚しく違背する懲戒権の明白な濫用として無効であるといわざるを得ない。

よつて原告等は、被告が原告等に対してなした前記懲戒処分の無効確認を求め、仮りに無効でないとしても、右処分には叙上の如き瑕疵があるから、その取消を求めるため本訴請求に及んだと述べた。

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として次の通り述べた。

原告主張の請求原因事実中、原告等が主張の期間主張の高等学校に勤務している地方公務員であること、原告等がその所属する熊高教組において、それぞれ主張の役職にあつたこと、並びに被告が原告等を主張の理由をもつて各戒告処分に付したことは認めるが、その余の事実上、並びに法律上の主張はすべて争う。即ち

一、地公法第三十七条第一項の規定は憲法に違反しない。

(一)、憲法第二十八条が保障する勤労者の諸権利は、他の基本的人権と同じく、公共の福祉に反しない範囲において、最大限の尊重を受けるものである。しかして地方公務員は住民全体の奉仕者として公共の利益のために、全力を挙げて職務に専念すべき義務を負うものであるから、地公法第三十七条の規定が、地方公務員の争議行為につき、一般の勤労者と異なる取扱いをしているのは当然であつて、右規定は何ら憲法第二十八条に違反しない。

(二)、罪刑法定主義は刑事手続にのみ適用される原則であつて、行政上の懲戒処分にまで適用されるものではない。

仮に適用があるとしても地公法第三十七条第一項後段は罪刑法定主義に何ら違反しない。即ちそそのかしあおる等の行為を正犯の実行行為と独立した可罰類型として規定することは立法政策又は刑事政策等の問題であつてそのこと自体憲法第三十一条と何等のかかわりがない。

(三)、次に憲法第二十一条が保障する集会結社の自由について地公法第三十七条第一項後段が何らの関係も有しないことは規定自体に照らし明らかである。また地方公務員に対して争議行為をあおり、そそのかすが如き表現活動は公共の福祉に反するから、憲法第二十一条の保障する表現の自由の範囲外にあるというべきである。従つて地公法が、かかる表現活動自体を禁止したからといつて、何ら憲法第二十一条に違反するものでない。

(四)、更に憲法第十八条にいわゆる苦役とは、本人の意思に反して強制労働に従事させることであるところ、地方公務員は何時でも自由に退職し得るものであるから、地公法第三十七条第一項第六十一条第四号が、地方公務員の争議行為を禁止しているからといつて、憲法第十八条に違反しないことはいうまでもない。

二、教員は校長から命令された宿日直勤務に従事すべき義務があるから、これを拒否することは許されない。以下この点を詳述する。

(イ)、教員が児童生徒の教育を本来の任務とすることはいうまでもないが、教員の職務はこれに限られるものではない。即ち学校教育法第二十八条第三項は小学校の校長は校務を掌り所属職員を監督すると規定し、これが同法第五十一条第七十六条によつて、高等学校、盲学校、聾学校にそれぞれ準用されている。ここに校務というのは、学校の人的物的両面の管理ならびに運営管理を含むものであるから、校長は校務処理の一環として、所属職員に対して宿日直勤務を命じ、これを管掌するのである。しかして地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、教育委員会が所管諸学校の教職員に関する勤務内容の基本事項を規律すると共に、学校財産をも管理するものであるが、被告教育委員会は同法第三十三条の規定に基き、熊本県立学校管理規則を制定し、その第十八条において、宿日直は職員の中から校長が命ずると規定して宿日直勤務が教職員の職務に含まれることを明確にした。従つて被告所管の県立諸学校の教職員は、校長より命令された宿日直勤務に従事すべき公法上の義務を負うものである。

(ロ)、次に、教職員に対して宿日直勤務を命ずることは何ら労働基準法に違反しない。即ち同法第四十一条第三号は監視または断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けた者については、同法第三十二条以下に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外している。ここにいう監視または断続的労働に従事する者とは、それらの労働を本来の任務とする者を指すことは勿論であるが、これに限らず、他に本来の職務をもつ者が附随的に監視または断続的な労働に従事する場合も過重な労働にならない範囲で、これに含まれるものと解すべきである。しかして同法施行規則第二十三条は右同法第四十一条第三号に基き、所管官庁(県立学校職員については地方公務員法第五十八条により県人事委員会)の許可を受ける様式を規定したものとみるべきで、右規定は何ら労働基準法第三十二条憲法第二十七条第二項に違反するものではない。右規則に基き、被告所管の県立諸学校の校長は所属教職員を宿日直勤務に従事させることにつき、県人事委員会の許可を得ている。

以上の根拠に基き校長は教職員に対して宿日直勤務を命ずるのであるから、これを拒否することは許されない。

三、被告が原告等を戒告処分に付した具体的理由は次の通りである。即ち

(一)、原告等は熊高教組において原告等主張の如き役職にあつて、一般組合員の動向を左右しうる主導的地位を占めていたものであるが、被告教育委員会が教職員に対する指導及び監督をより適切ならしめ、人事管理の公正を期する目的で、昭和三十三年五月十三日、熊本県立学校職員の勤務評定に関する規則を施行したことに対して、原告等は日本教職員組合中央執行委員長小林武の指令に基き、熊高教組傘下の教職員を動員して、右勤務評定規則に反対し、その反対斗争の一環として、旁々、同組合がかねてより目的としていた宿日直は教職員の職務でないという主張を貫徹せんがために、その頃、共に意思を通じて教職員の宿日直勤務を一斉に拒否する斗争を企画した。

(二)、しかして原告馬場は、右斗争計画に基き、昭和三十三年五月二十五日、執行委員長馬場昇名義をもつて、組合支部長に宛て斗争指令を発し、支部長を通じて一般組合員たる教職員に対し、五月二十六日を期して、一斉に宿日直を拒否せよと指令して、争議行為に突入するようあおり、そそのかした。

(三)、更に原告等は、全職員を右宿日直拒否斗争に参加させんとして、それぞれ別表(一)記載の通り、被告所管の諸学校に赴いて多数の教職員に対し「宿日直は教職員の職務でない。勤務評定制度に反対するため一斉に宿日直を拒否されたい」等と強く説得、勧誘して、それぞれ争議行為の遂行をあおり、そそのかした。

その結果、同年五月二十六日より翌六月二十二日までの二十八日間にわたり、被告所管の県立諸学校四十三校中、別表(二)記載の通り三十四校において、教職員中の組合員全員、あるいはその大部分が校長の宿日直命令を拒否し、その延人員は千百七十四名に達した程で、このため校務の正常な運営が甚しく阻害された。

叙上の如く、右宿日直の一斉拒否は勤務評定反対斗争の一環として、教職員が熊高教組の指令下になした組織的且つ集団的な公務拒否行為であるから、これが地方公務員の争議行為に該当することは明らかであつて、原告等は組合の幹部として、前述の如く、右争議行為を積極的に企てその遂行をあおりそそのかしたものであるので、これに対して被告が原告等を戒告処分に付したのはもとより正当である。

四、原告が請求原因の四、五に於て主張する事実並に法律解釈はすべてこれを争う。

以上の通りで、本件懲戒処分には、これを無効ならしめるが如き違法な点は何もないことは勿論、これを取消すべきいわれもないものである。

(証拠省略)

理由

原告岡村を除く、その余の原告等が、いずれも高等学校教諭として、原告等主張の日時より主張の熊本県立高等学校に勤務する地方公務員であり、原告岡村が同原告主張の期間、熊本県立天草高等学校に勤務する地方公務員で何れも原告主張の熊高教組役職員であつたこと、及び被告が原告等を昭和三十三年十二月二十二日付をもつて、原告等主張の如き理由により各戒告処分に付したことは当事者間に争がない。

原告等は右懲戒処分はいずれも違法無効であり、そうでないとしても取消さるべきであると主張するので、以下順次判断する。

一、地方公務員法第三十七条第一項の規定が憲法に違反するとの主張について。

(一)、憲法第二十八条に違反するとの主張について。

民主々義社会に於て勤労者の団結権が最高度に保障されねばならないことは当然であるが、然しこれらの権利といつても公共の福祉を維持するために必要最小限の制限を受けることは已むを得ないところである。特に地方公務員は住民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならないものであるから、その職責にかんがみ、公共の福祉を維持するの必要から、法律により一般労働者に認められている争議行為等を全面的に禁止したことは当然であるが、そのためには地方公務員が争議権のある労働者に比し不利益にならないよう法律による保障が与えられねばならないことも論を俟たないところである。しかして地方公務員法は地方公共団体に対して、地方公務員の給与その他の勤労条件を維持改善すべきことを要求すると共に、人事委員会をして毎年、地方公務員の給与等について調査勧告をなすよう義務づけて、これらを適正ならしめるべき措置を講じているばかりでなく、不利益処分を受けた者に対しては、人事委員会の審査を請求する手続をも保障しているから、地方公務員から争議権を奪つた同法第三十七条第一項の規定が地方公務員の労働基本権を不当に制限したということにはならない。

原告等は地公法第二十四条第二十六条第四十六条第四十七条等の諸規定は憲法で保障された争議権を剥奪する十分な代償とはならないと主張するのであるが地方公共団体の予算編成権などとの関係を考慮すれば、現行程度の保障を以て満足するほかはないのであつて、地公法第三十七条第一項が憲法第二十八条に違反するとの原告の主張は排斥のほかはない。

(二)、憲法第三十一条に違反するとの主張について。

本件の如き行政上の懲戒処分は、いわゆる特別権力関係の内部秩序を維持するため、これを紊乱した部内者に対して科せられる制裁であつて、特段の法律がない場合にも、懲戒権者の妥当な裁量によつて、これを行いうると解されるから、かかる処分に対して罪刑法定主義の適用はないというべきである。のみならず、地方公務員の争議行為を企て、その遂行を共謀し、或いはあおりそそのかすが如き所為は、行政機関の正常な機能を麻痺させひいては地方住民の権益に著しい障害を与えんとするもので、公共の福祉に反するから、かかる所為を法律によつて禁止し得るのは当然である。またこれを規定した地公法第三十七条第一項の法文自体に何ら不明確な点は認められないから、この点に関する原告の法解釈は全く採るに足らない。

(三)、憲法第二十一条に違反するとの主張について。

原告の主張するところは本来地方公務員の怠業はそれが個々人によりなされる限り処罰の対象にならないのに、これを争議手段として組織し又は組織維持するための言論活動を処罰することは憲法の保障する集会結社、その他の表現活動の自由を犯すものであるというもののごとくであるが、原告の所論を以てすれば直接刑罰を科せられない行為であれば、それが本来違法な行為であつても、その行為を達成するための集会結社、又はそのためにする言論活動はすべて自由を保障さるべきであるということに帰しその不当であることは言を俟たないところである。即ち地方公務員の怠業行為はそれが個々人によりなされる場合でも許されない違法行為であることは地公法第三十七条第一項前段の趣旨に徴し疑いの余地のないところで、これら個々人の怠業行為に対し刑事罰を科せないのは単に刑事政策上の問題に過ぎない。然るに原告等が個々人の行為に対し刑事罰を科せられないことを目しこれを正当な行為であるが如くに飛躍解釈して、これらの行為を組織又はそのためにする言論活動迄がその自由を保障さるべきであると言うが如きは憲法第二十一条の解釈を誤まつたものとして所論は排斥を免がれない。

(四)、憲法第十八条に違反するとの主張について。

原告等の言う意味は「地方公務員が争議行為をすれば処罰される。処罰を免かれようと思えば、嫌な仕事もしなければならない、このことはとりもなほさず意思に反して働くことになるので憲法第十八条に違反する」ということのようであるが、地方公務員の職務内容はそれがいかなる種類のものであるにせよ憲法第十八条の禁じている奴隷的拘束や苦役でないことは言を俟たないところであるが、仮にそれを奴隷的拘束又は苦役と感ずるならば、自己の意思を以て自由に雇傭干係を脱し得るのであるから地公法第六十一条第四号が地方公務員の争議行為を企て共謀し、あるいは教唆煽動するが如き所為を刑罰をもつて禁止しているからといつて、これをもつて憲法第十八条の保障する苦役からの自由を侵害するということは当らない。

以上の通りで原告等の違憲論は、いずれも理由がないので到底採用することができない。

二、次に原告等は、教員は宿日直をなすべき義務がないから、教員に対して宿日直を拒否するよう教唆煽動したとて、何ら咎めらるべきいわれはないと主張するので考えてみる。

(イ)、宿日直が教員の職務でないとの主張について。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、県教育委員会が大学を除くその余の県立諸学校における教員の服務を規律すると共に、右諸学校の財産を管理する職務権限を有するものであるところ、学校教育法第二十八条第三項は小学校の校長は校務を掌り、所属職員を監督すると規定し、同法第五十一条、第七十六条により高等学校、盲学校及び聾学校にそれぞれ準用されているので、校長は教育委員会の指揮監督に服すると共に、その補助機関として、校務につき所属職員を指揮監督する立場にあることが明らかである。しかしてここに校務というのは、学校の運営に関する諸般の業務を指すと解されるから、校長は校務の一環として、学校における施設、設備及び書類等の保全、外部との連絡、文書の収受並びに校内の監視等についての対策を講ずべきであり、そのために宿日直に関する事項を管掌するというべきである。

ところで教員の本来の任務が児童生徒の教育にあることはいうまでもなく、且つ教員を他の諸用務から解放して教育活動に専従せしめるのが望ましいことは勿論であつて、学校教育法においても学校に事務員をおくと規定して、職務の分担を図つていることが認められるけれども、これらの規定及びその他、教育基本法等に照らしても、制度上、教員が本務以外の附随的業務に従事すべき義務を一切免除されているとまでは到底認められないのであつて、特に宿日直の如く、他に本来の職務を有する者によつても行いうる仕事を、教職員の附随的職務と定めて、これに割当てるか、あるいは別に警備員を雇用して専らこれに行わしめることとするかは、学校の規模、予算上の裏付け、その他学校運営に関する諸般の事情に基き、教育行政の責任者たる教育委員会の措置に一任されているものというべきである。原告等はこの点につき、大学の教授に対して宿日直を命じうるとは考えられないことを根拠として、その他の教員も同様に取扱われるべきであると主張するけれども、大学教授とその他の諸学校の教員との間には、任用の基準並びに職務内容について、顕著な差異があることは、関係法律の諸規定に徴し明らかであるから、一般教員が宿日直について大学教授と異なる所遇を受けることのあるのは当然であつて、原告等の右主張は採用するに足りず、その他、原告等が教員に宿日直の義務がない理由として述べるその余の諸主張も、すべて独自の意見というほかなく採用するに由ないものである。

しかして成立に争のない乙第十二号証、及び証人横山治助、同佐藤安行、原告馬場昇、同長谷川贇の各供述を綜合すると、熊高教組において、昭和二十八年頃より、教員に対して宿日直を命令する法的根拠が問題とされるようになつたが、これに対して被告教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十三条に基き、昭和三十二年十一月九日、熊本県立学校管理規則を制定し、その第十八条において、宿日直は職員の中から校長が命令する旨規定して、教員に宿日直をなすべき義務があることを明確にしたことが認められるばかりでなく、右宿日直に関する手当は、県の負担とされて、教員の宿日直勤務に対して支給されていることを認めるに十分であるから、被告教育委員会所管の県立諸学校の教員は、校長より命令された宿日直勤務に従事すべき義務あることが明らかである。  (ロ)、宿日直勤務が労働基準法違反であるとの主張について。

次に、原告等は教員に対して宿日直勤務を命ずることは、労働基準法第三十二条に違反するから許されないと主張するので、更にこの点につき考えてみる。同法第四十一条第三号は右第三十二条の例外規定であるが、同号にいう監視または断続的業務に従事する者とは、その勤務を本来の任務とする者を指すことはいうまでもないが、必らずしもこれのみに限定して解釈すべきものではなく、他の業務を本務とする者が附随的に監視または断続的業務に従事する場合も過度の労働にならないことを条件として、これに含めて規定しているものと解するのが相当である。従つて同法施行規則第二十三条の規定は、右同法第四十一条第三号に基きその細則を定めたものであるから、もとより有効であつて、右規定が労働基準法第三十二条憲法第二十七条第二項に違反して無効であるとの原告等の主張は当らないというべきである。しかして被告所管の県立諸学校の校長が所属の教職員を宿日直勤務に従事させることにつき、労働基準法第四十一条第三号、同法施行規則第二十三条地方公務員法第五十八条の規定により、熊本県人事委員会の許可を受けていることは当事者間に争のないところであるから、校長が教職員に対して宿日直勤務を命ずることは何ら労働基準法に違反しないというべきである。

以上の通りで被告所管の県立諸学校の教職員は、校長より命令された宿日直勤務に従事すべき公法上の義務があるから、これを拒否することは許されないといわざるを得ない。

三、そこで進んで原告等が被告の主張する如く宿日直拒否斗争を企て、その遂行をあおりそそのかしたか否かについて以下逐次検討する。

(一)、成立に争のない甲第一号証、乙第一ないし第八号証、第十号証、証人宮之原貞光、同横山治助、同榊原剛三の各証言、及び原告鶴寿、同馬場昇の各本人尋問の結果(但し証人宮之原、同榊原、及び原告鶴、同馬場の各供述中、後記措信しない部分を除く)に弁論の全趣旨を綜合すると、熊高教組は熊本県教職員組合協議会を通じて日本教職員組合(以下日教組と略称する)に加入しているものであるが、昭和三十一年末頃、愛媛県下において教職員に対する勤務評定制度が実施されたことを契機として、日教組は全国的組織を通じて勤務評定制度に反対する運動を開始し、特に昭和三十二年十二月開催の第十六回臨時全国大会において、その反対斗争のため最大限の実力を行使する旨を決議した。当時熊本県下に於ても早晩、勤務評定制度が実施さるべき形勢にあつたことから、これに対して如何なる反対斗争を行うべきかにつき、熊高教組執行委員会で種々討議を重ねた結果、反対斗争の一環として宿日直を一斉に拒否する斗争を計画するに至つた。しかして被告教育委員会が昭和三十三年五月初旬、県立諸学校職員の勤務評定に関する規則を制定施行するに及び、宿日直勤務も成績評定の対象に含まれることもあつて、熊高教組は、その頃開催された常任代議員会において、宿日直拒否斗争を行う旨を決議し、合わせて戦術上、右斗争に関する指令権を日教組へ委譲する旨を決定した。これに対して、日教組中央執行委員長小林武より同年五月二十日付をもつて、熊本県教職員組合協議会を通じて、熊高教組に対し、同月二十六日を期して宿日直拒否斗争に突入せよとの指令が発せられた。右指令に基き、原告馬場は同月二十五日、熊高教組執行委員長馬場昇名義をもつて、各組合支部長宛ての斗争指令を発し、支部長を通じて各教職員に対し「日教組中央執行委員長の指令に基き、全組合員は五月二十六日より一斉に宿日直を拒否せよ」と指令した。その結果、同年五月二十六日より翌六月二十二日までの二十八日間にわたり、被告所管の県立諸学校四十三校中、別表(二)記載の通り、三十四校において、教職員延千百余名が前記指令に従つて、校長の宿日直命令を拒否し、このため右諸学校においては、校長、教頭等少数の職員のみによつて宿日直を継続せざるを得ない状態に陥つたことが認められる。右認定に反する証人宮之原、同榊原及び原告鶴、同馬場の各供述部分は措信し難く、他に右認定を覆すべき証拠はない。右事実に徴すれば、宿日直拒否斗争なるものは、勤務評定反対斗争の一環として、熊高教組の指令に基き、所属教職員が統一的、組織的、集団的になした職務拒否行為であつて、地公法第三十七条第一項の争議行為に該当することが明らかであり、原告等は組合の執行委員会の役員として、共に意思を通じて右宿日直拒否斗争を計画して争議行為を企て、また原告馬場は所属教職員に対して宿日直を拒否せよと指令して県下全般にわたる争議行為の遂行をそそのかしあおつたことが認められる。

(二)、そこで更に進んで原告等に、右認定事実以外に被告主張の如き争議行為をあおりそそのかした個々の行為があつたかどうかについて考えてみる。

第一、原告馬場の行為。

(1)、別表(一)第一、(一)高森高校干係について。

証人杉田恒男、同菅篤哉の各証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は被告主張の日時、場所において開催された高森高等学校の職場会に出席し、宿日直拒否斗争中止の意見が高まつていた同校職員約十五名に対し「高森高等学校が宿日直拒否斗争から落伍することのないよう」激励して争議に挺子入れをしたことが認められる。

(2)、前同(二)盲学校干係について。

右事項に関する被告の主張事実を認めるに足る証拠がないので、その主張は採用の限りでない。

(3)、前同(三)熊本工業高校干係について。

証人林田秋盛の証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所における熊本工業高等学校職場会の席上で、まだ宿日直拒否斗争に入つていなかつた同校職員約七十名に対し「宿日直は教員の本務ではない。組合の統一行動を乱すことなく、同校も宿日直を拒否されたい」という趣旨の演説をしたことが認められる。

(4)、前同(四)小国高校干係について。

証人松崎栄一郎、同橋本徳雄の各証言及び池松彦繁本人尋問の結果に弁論の全趣旨を綜合すると、原告馬場は小国高等学校へのオルグから帰つた原告池松より、同校支部で既に決定していた斗争中止の方針を変更できなかつた旨の報告を受けたので、被告主張の日時に、主張の右小国高等学校へ至り、職場会の席上で、職員約二十名に対して「斗争を中止することなく宿日直拒否を続行されたい」という趣旨の発言をしたことが認められる。同原告はその本人尋問に於て同学校へは組合組織の分裂を防ぐために出向いたもので、むしろ斗争を中止して組織を守るよう助言したものであると弁疎し、前掲証拠を綜合すると、小国高等学校では一旦宿日直拒否斗争に入つたものの、間もなく支部長がこれに反対して組合を脱退する意向を表明したため組合員の足並が乱れ、遂に前記の如く斗争を中止する旨の決定がなされるに至つたこと、当日の職場会でも宿日直拒否に反対する支部長の意見に賛同する職員が少なくなかつたので、原告馬場において、「組合の組織を守るために斗争を解くのも已むを得ない」という趣旨の発言をしたこと、その直後、職場会は斗争中止の決定を再確認したことが認められ、以上、一連の事実によると、原告馬場は一見矛盾するが如き発言をなしたようにもみえるけれども、仔細に検討すれば、同原告の発言を一貫する趣旨は要するに「出来うれば同校も一致して斗争を続行されたい」という強い要請の表明であつたことが窺われるので、同原告の前記弁解は採用するに足りず、他に以上の認定を覆すべき証拠はない。

(5)、前同(五)多良木高校干係について。

証人塚本弘全、同田代正勝、同深水彦馬、同木下俊文の各証言を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所において、多良木高等学校の職場会に出席し、その席上、まだ宿日直拒否を行つていなかつた同校教職員約三十名に対し「殆んどの支部が斗争に入つているのに球磨地協の本部である同校が斗争に突入していないのは困るので、同僚を見殺しにすることなく、是非宿日直を拒否されたい」という趣旨の発言をしたことが認められる。

(6)、前同(六)球磨農業高校干係について。

右についての被告主張事実はこれを認めるに足る証拠がないので採用できない。

(7)、前同(七)人吉高校干係について。

証人松岡勝人の証言により真正に成立したものと認められる乙第十三号証、証人西尾哲一郎、同笠置英行、同松岡勝人、同深水二一、同林豊博、同池田清登、同古沢昭二郎の各証言を綜合すると、同原告は、被告主張の日時場所において開催された人吉高等学校の職場会の席上で、まだ宿日直拒否斗争に入つていなかつた同校職員約六十名に対し「球磨地協加盟の他の三校は斗争突入に躊躇しているが、人吉高校が突入すれば他校も踏切るだろうから拒否斗争に参加してもらいたい。宿日直は教職員の本務でなく、これを拒否しても処罰の対象とならない」という趣旨の発言をしたことが認められる。

以上認定のとおり原告馬場は、(1)(3)(4)(5)(7)の各高等学校に於て前示のような各発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものと認めることができる。

第二、原告岡村の行為。

(1)、別表(一)第二(一)菊池西農業高校干係について。

証人源亮の証言によると同原告は被告主張の日時、場所において開催中の菊池西農業高等学校職場会に出席し、同校職員約二十名に対し「勤務評定制度は非科学的なもので、教育委員会がこれを強行するのは不当である。これに反対するため宿日直拒否斗争を行つているのであるから、同校でも是非斗争に参加して貰い度い」という趣旨の演説をなしたことが認められる。

(2)、前同(二)熊本農業高校干係について。

証人河野仁男の証言によると、同原告は被告主張の日時場所において開催中の熊本農業高等学校職場会の席上で、職員約三十名に対して「宿日直は教職員の本務ではなく、組合でこれを拒否する斗争を行うべく決定したから、同校も斗争に参加して貰いたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

(3)、(4)、前同(三)、(四)一町田並に天草各農業高校干係について。

右事項についての被告の主張事実を認めるに足る証拠がないので、右主張はいずれも採用しない。

(5)、前同(五)天草高校干係について。

証人金沢信之、同森山行雄、同樫木銘雄、同梅崎保男の各証言を綜合すると、同原告は被告主張の日時、場所において開催された天草地区教頭及支部長懇談会の席上で、同地区の教頭及び組合支部長約十名に対して「組合で宿日直拒否斗争を行うことを決定したから、教頭も義理人情にこだわることなく、斗争に協力されたい」という趣旨の要請を行つたことが認められる。

そうだとすれば原告岡村は右認定の如く(1)(2)(5)の各高等学校に於て前示の如き各発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものであることが認められる。

第三、原告鶴の行為

(1)、別表(一)、第三、(一)水俣高校干係について。

証人岡田節生、同佐々木幸光、同堀口勇の各証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所において開催された水俣高等学校の職場会の席上で、宿日直拒否を中止する意向が高まつていた同校職員約四十名に対して「斗争から脱落することなく、宿日直拒否を続けて貰い度い」という趣旨の演説をなしたことが認められる。

(2)、前同(二)菊池西農業高校干係について。

証人源亮の証言によると、同原告は被告主張の日時、場所において開催中の菊池西農業高等学校の職場会の席上で、教職員約十五名に対し「勤務評定反対斗争の一環として、宿日直拒否を行つているのであるから、同校もその線に沿つて協力して斗争に参加されたい」という趣旨の発言をしたことが認められる。

(3)、前同(三)熊本工業高等学校干係について。

証人林田秋盛の証言によると、同原告は、被告主張の日時、場所において開催中の熊本工業高等学校の職場会の席上で、教職員約七十名に対し「宿日直は教職員の本務ではない」旨強調することにより暗に同校も斗争に協力するよう仄めかしたことが認められる。

(4)、前同(四)菊池高校干係について。

証人牧島貞蔵、同中村忠敏、同秋田豊正の各証言を綜合すると、同原告は被告主張の日時、場所において開催された教頭並支部長の懇談会に出席し、菊池地区の教頭及び組合支部役員五、六名に対し「組合で宿日直拒否斗争を計画しているから、教頭は率先してこれに協力されたい」という趣旨の要請を行つたことが認められる。

(5)、前同(五)多良木高校干係について。

右についての被告主張事実はこれを認めるに足る証拠がないので採用できない。

(6)、前同(六)球磨農業高校干係について。

証人湯地宏の証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所における球磨農業高等学校の職場会に出席し、職員約三十名に対して「宿日直拒否斗争を行うべく決定したから、これに参加されたい」という趣旨の発言をしたことが認められる。

(7)、前同(七)玉名高校干係について。

証人末次幸一の証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は原告長谷川と共に、被告主張の日時、場所で開催中の玉名高等学校の職場会に出席し、職員約四十名に対して「宿日直は教職員の本務ではないから、これを拒否しても、処分の対象とならない。他校は既にこれを拒否する斗争に突入しているので、同校も斗争に参加されたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

そうだとすれば、原告鶴は、右認定の如く(1)ないし(4)及び(6)(7)の各高校に於て前旨の如き発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものであることが認められる。

第四、原告森崎の行為。

(1)、別表(一)第四、(一)山鹿高校干係について。

証人有働恭輔、同横手大八、同原口長之の各証言を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所において開催中の山鹿高等学校の職場会に出席し、父兄会や市議会の反対により宿日直拒否斗争を続けることに動揺を来していた全組合員に対して「宿日直を拒否することは何ら法律に違反しない」旨を説明することにより同校が斗争より脱落しないよう示唆したことが認められる。

(2)、前同(二)御船高校干係について。

証人渡辺信雄、同西林楯城の各証言によると、同原告は、被告主張の日時場所における御船高等学校の職場会に出席し、教職員約三十名に対して「宿日直は教職員の職務でないから、勤務評定に反対するため宿日直を拒否しても法律に違反しないし、勿論、処罰の対象とならない」という趣旨を強く説得したことが認められる。

(3)、前同(三)ろう学校干係について。

右事実についてはこれを認めるに足る証拠がないので採用できない。

(4)、前同(四)ろう学校干係について。

証人尾形速雄の証言によると、同原告は、被告主張の日ろう学校々長室に於て組合員二、三名の居合せた面前で同校の校長に対し、「宿日直は教職員の職務でないのに、教育委員会がこれを強制するのは不当である」という趣旨の発言をしたことは認められるが、右発言が特に同席の組合員を意識し、これ等の者に向けられたものであると認めるに足る証拠はないので、右発言を以て争議行為をあおり、そそのかしたとの被告の主張は採用できない。

(5)、前同(五)一町田農業高校干係について。

右事項に関する被告の主張事実を認めるに足る証拠がないので、右主張は採用しない。

(6)、前同(六)多良木高校干係について。

証人湯地宏、同深水彦馬の各証言を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所で開催された球磨地区の教頭並に定時制主事の懇談会に出席し、教頭及び主事五、六名に対し「宿日直は教職員の職務でなく、組合でこれを拒否する斗争を行うことに決定したから、教頭主事も斗争に協力して貰い度い」という趣旨の要請を行つたことが認められる。

そうだとすれば、原告森崎は右認定の如く(1)(2)(6)の各高校に於て前示の如き各発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものであることが認められる。

第五、原告池松の行為。

(1)、別表(一)、第五、(一)菊池西農業高校干係について。

証人源亮の証言及び原告池松本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は被告主張の日、斗争指令が発せられて十日余を経ているのに、まだ宿日直拒否を行つていなかつた菊池西農業高等学校に赴き職場会議の席上で「他の学校に協力する意味で同校も斗争に入るよう」に要請したことが推認される。

(2)、前同(二)小国高校干係について。

証人松崎栄一郎の証言及び原告池松本人尋問の結果を綜合すると、同原告は被告主張の日時場所で開催された小国高等学校の職場会に出席し、既に宿日直拒否斗争の中止を決議していた同校組合員の殆ど全部に対して「他の学校は斗争を続けているので同校も落伍することなく、宿日直拒否を続けて貰い」という趣旨を強く要請したことが認められる。

(3)、前同(三)多良木高校干係について。

証人深水彦馬、同田代正勝の各証言及び原告池松本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、被告主張の日時、場所において、職場会を開催中の多良木高等学校の教職員約二十五名に対して「組合で宿日直拒否斗争を行うべく決定しているので、協力して貰い度い」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

そうだとすれば、原告池松は右認定の如く(1)ないし(3)の各高校に於て前示の如き言動をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものであることが認められる。

第六、原告長谷川の行為。

(1)、別表(一)、第六、(一)熊本農業高校干係について。

証人河野仁男の証言に弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、原告岡村と共に、被告主張の日時、場所において、職場会を開催中の熊本農業高等学校の教職員約三十名に対して「組合で宿日直拒否斗争を行うべく決定したから、同校もこれに参加されたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。右認定に反する証拠はない。

(2)、前同(二)玉名高校干係について。

証人末次幸一の証言によると、同原告は、原告鶴と共に、被告主張の日時、場所において、職場会を開催中の玉名高等学校の教職員約五十名に対して「宿日直は教職員の本務ではなく、これを拒否しても処罰の対象とならない。他校では既に宿日直拒否斗争に突入しているので、同校も是非、拒否突入の決議をされたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。右認定に反する資料はない。

(3)、前同(三)玉名農業高校干係について。

右事実についてはこれを認めるに足る証拠がないので採用できない。

(4)、前同(四)小国高校干係について。

証人松崎栄一郎の証言によると、同原告は、被告主張の日時場所において開催中の、小国高等学校の職場会に出席し、教職員約二十名に対して宿日直拒否斗争の目的、これと勤評反対斗争との関連性を説明した上、組合員の質問に対し「宿日直拒否に関する限り条件斗争はあり得ない」旨組合員を説得し本斗争に参加するよう慫慂したことが認められる。

(5)、前同(五)多良木高校干係について。

証人深水彦馬、同田代正勝、同木下俊文の各証言を綜合すると、同原告は、被告主張の日時場所において、職場会を開催中の多良木高等学校に於て大部分の教職員に対して「県下の高校は拒否斗争に突入したが球磨地協は突入していない。殊に本校は右地協の委員長を出しているのに斗争に突入しないのはおかしい。寧ろ率先して斗争に入るべきである」という趣旨の発言をしたことが認められる。

そうであるとすれば、原告長谷川は右認定の如く(1)(2)(4)(5)の各高校に於て前示の如き各発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおりそそのかしたものであることが認められる。

第七、原告水谷の行為。

(1)、別表(一)、第七、(一)鹿本高校干係について。

証人下田英雄、同星子忠義の各証言並びに弁論の全趣旨によると、同原告は、被告主張の日時場所において職場会を開催中の鹿本高等学校教職員約三十名に対して「勤評を阻止するため他の学校と同様、同校も宿日直拒否斗争に突入する態勢を取つて貫い度い」という趣旨の発言をしたことが認められる。

(2)、前同(二)盲学校干係について。

証人小代勇の証言によると、同原告は、被告主張の日時場所における熊本盲学校に於ける組合員との懇談会の席上出席の組合員に対して「宿日直拒否斗争は組合の統一行動として決定されたものであるから、同校も斗争に突入することに踏切つてもらいたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

(3)、前同(三)御船高校干係について。

証人島田幸夫の証言によると、同原告は被告主張の日時場所において開催された懇談会に出席し、上益城地区の教頭、主事四名に対して「組合で宿日直拒否斗争を計画しているので、教頭、主事もこれに協力されたい」という趣旨の要請を行つたことが認められる。

(4)、前同(四)菊池西農業高校干係について。

証人源亮の証言によると、同原告は、原告鶴と共に被告主張の日時場所において職場会を開催中の菊池西農業高等学校の教職員約十五名に対して「勤務評定反対斗争の一環として宿日直拒否を行つているのであるから、同校もその線に添つて協力して斗争に参加されたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

(5)、前同(五)大津高校干係について。

証人内田萬の証言によれば、同原告は、被告主張の日時場所において、大津高等学校農業部の主任及び支部役員の二名に対して「同校農業部も普通部に同調して、宿日直を拒否して貰いたい」という趣旨の発言をなしたことが認められる。

(6)、前同(六)山鹿高校干係について。

証人後藤格、同有働恭輔、同隈部譲吉の各証言及び弁論の全趣旨を綜合すると、同原告は、被告主張の日時場所において、職場会を開催中の山鹿高等学校の殆ど全部の職員に対して「勤務評定反対のために、宿日直を拒否しよう。宿日直拒否斗争の責任は執行部が負い現場の職員には迷惑をかけないから、斗争に参加して貰いたい」という趣旨の発言をしたことが認められる。

(7)、前同(七)熊本工業高校干係について。

証人林田秋盛の証言によれば、同原告は、被告主張の日時場所において開催中の熊本工業高等学校の職場会に出席し、まだ宿日直拒否斗争に入つていない同校教職員に対して「宿日直は教職員の本務でない」という趣旨の発言をなし拒否斗争に突入するよう仄かしたことが認められる。

そうだとすれば原告水谷は、右認定の如く(1)ないし(7)の各学校に於て前示の如き発言をなし、もつてそれぞれ争議行為の遂行をあおり、そそのかしたものであることが認められる。

原告等は前記宿日直の一斉拒否は下部組合員の盛上る総意の結集によつて自発的に行われたもので、原告等組合幹部においてこれを企て、あおりそそのかしたものではないと主張するけれども、叙上認定の事実によれば、原告等組合執行部の役員間において宿日直拒否斗争を協議計画したものであること、並びに原告馬場が発した前記斗争指令及び原告等がなした前記認定の各言動が争議行為をあおりそそのかす行為に該当することが明らかであるので、原告等の右主張は事実に則しない独自の意見というべく、採用の限りでない。

また原告等は同人等のなした行為は、組合の執行機関として当然の義務を履行した正当な組合活動であつて、これを違法とすることは組合組織を否定することとなり、地公法第五十六条に違反すると主張する。しかしながら、組合の執行機関と雖も違法な争議行為を企てたり、あるいは違法の決議を執行すべき義務はなく、これを敢えてした場合は、自ら法律上の責任を負わなければならないこと勿論であつて、かかる行為はもはや正当な組合活動とはいえないから、違反者を懲戒処分にしても地公法第五十六条違反の問題が生ずる余地はないというべきである。

四、次に原告等は地公法第三十七条第一項の規定は、それ自体が憲法第二十八条に違反しないとしても同条は地方住民の法益を現実的に危険ならしめるが如き争議行為をなした場合に限り適用し得るものであるに拘らず、本件の如く地方住民の権利に何らの危険を及ぼさない行為に対し同法を適用してなした懲戒処分は憲法第二十八条に違反し無効であると主張する。しかしながら地公法第三十七条第一項の規定はこれを適用すべき場合が限定されているとは到底考えられないばかりでなく、右規定に該当するが如き行為は、直接、地方住民の利益に危害を与えない場合と雖も、すべて行政秩序を紊乱せんとするもので、公共の福祉に反するから、違反者をその軽重の度合に応じ適宜懲戒処分に付しうることは勿論であつて、かかる場合の懲戒処分が憲法第二十八条に違反するということは当らない。従つてこの点に関する原告等の主張は採用の限りでない。

五、次に原告主張の請求原因五項について考えてみる。同項に於て原告等の主張するところは、その意味が必ずしも明白でないが原告等の主張は「本件の宿日直拒否斗争は低い手当を以て教職員に宿日直を強いたり、又は本件に名を藉り他の正当の組合活動迄を弾圧しようとする被告委員会に対する正当防衛的又は自救手段的斗争であるから、之に対し懲戒権を発動するのは信義誠実の原則に反し権利の濫用である」というものの如くであるが、宿日直手当の改善を計るため地方公務員が争議行為をすることのできないことは勿論であるばかりでなく、被告の本件懲戒処分が原告等の他の正当な組合活動を弾圧する意図の下になされたとの証拠は何もないので原告等の右主張も採用の限りでない。

結び。以上述べたところにより明かなとおり原告等の所為は何れも地公法第三十七条第一項に違反するものであるから、これに対し被告が同法第二十九条第一項第一号を適用して各戒告処分に付したのは正当であつて、右各処分にはこれを無効ならしめるが如き違法な点は何もないことは勿論、本件処分が懲戒処分の内、最も軽い戒告処分であることに照しこれを取消すべき違法事由もないことが明らかであるから、原告等の本訴請求はいずれも認容するに由ないものとして棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 浦野憲雄 村上博己 滝口功)

別表(一)

第一、原告 馬場昇の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

高森高校

同校職員

約一五名

昭三三、六、一六後四時半

~五時半頃

高森高校が宿日直拒否から落伍したら交渉にもひびくから拒否を解かずに続けること

(二)

盲学校

約三十名

〃   六、一七後六時四十分頃

~前〇時頃

組合の統一行動を乱さず宿日直拒否をすること

(三)

熊本工業高校

約五十名

〃   五、三〇後五時半頃

~六時半頃

(四)

小国高校

約二十名

〃   六、六後四時半頃

~十時頃

宿日直拒否をやめないで是非拒否すること

(五)

多良木高校

約三十名

〃   六、四後五時半頃

~六時五十分頃

高教組の殆んどの支部が宿日直拒否に突入している今日、同僚を見殺しにしないで是非突入すること

(六)

球磨農業高校

約三十名

〃   六、四後三時頃

~四時頃

人吉高校も既に突入と決定したので、本校も是非突入すること

(七)

人吉高校

約六十名

〃   六、三後九時半頃

~前三時頃

宿日直は教職員の本務ではなく宿日直拒否をしたからといつて処罰の対象にはならないから是非突入すること

第二、原告 岡村治男の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

菊池西農業高校

同校職員

約二十名

昭三三、五、二七後七時頃

~十時頃

宿日直拒否をしても決して先生方には心配かけないから是非宿日直拒否をすること。

(二)

熊本農業高校

約三十名

〃   五、二四後一時頃

~六時二十分頃

宿日直は職務でないから拒否するというのは表面的理由であり実は勤評反対斗争の一環として行うのであり是非宿日直拒否すること。

(三)

一町田農業高校

約十名

〃   五、一四後六時頃

~十時十五分頃

宿日直拒否を行う予定であるので実施の場合は本校も拒否すること。

(四)

天草農業高校

約三十名

〃   五、一九後四時半頃

~七時半頃

宿日直拒否は団結の程を県教委に示し、今後の斗争をよりよく展開するために行うもので決して組合員に心配はかけない、責任は吾々高教組本部が負うので拒否を行うこと。

(五)

天草高校

天草地区教頭外

約十名

〃   五、一九前十一時半頃

~後二時頃

宿日直拒否に教頭は率先協力すること。

第三、原告 鶴寿の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

水俣高校

同校職員約四十名

昭三三、六、一六後五時頃

~七時頃

県下全般の情勢から宿日直拒否を続行すること。

(二)

菊池西農業高校

約十五名

〃   五、二八後五時頃

~八時四十分頃

他の学校も宿日直拒否に突入しているので是非突入すること。

(三)

熊本工業高校

同校職員約五十名

〃   六、二後五時半頃

~六時頃

他の学校も宿日直拒否に突入しているので是非突入すること。

(四)

菊池高校

菊池地区教頭

〃   五、一九後四時半頃

~五時頃

今回計画の宿日直拒否について教頭は率先協力すること。

(五)

多良木高校

同校職員約十名

〃   五、二四後五時頃

~五時半頃

宿日直拒否をすること。

(六)

球磨農業高校

〃約三十名

〃   五、二四前八時半頃

~十一時頃

本校も宿日直を拒否すること。

(七)

玉名高校

〃約四十名

〃   六、四後五時頃

~六時半頃

玉高支部も宿日直拒否に入るよう決定すること。

第四、原告 森崎晃の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

山鹿高校

同校職員

約四十名

昭三三、六、一六後四時半頃

~五時半頃

宿日直拒否をしても法違反にならないからこのまま宿日直拒否を続けること。

(二)

御船高校

約三十名

〃    五、一五

宿日直は教職員の職務ではない、従つて宿日直拒否しても法違反ではないこと。

(三)

ろう学校

同校職員

約五十名

〃   五、二七後四時頃

~七時半頃

宿日直は教職員の職務ではない、拒否すること。

(四)

ろう学校

約五名

〃   五、三一後二時二十分頃

~二時五十分頃

宿 日直は教職員の職務ではない、それを管理規則にきめてこれを守れというのはおかしい。

(五)

一町田農業高校

約十名

〃   六、一八後五時二十分頃

~六時頃

一町田も是非宿日直拒否に突入すること。

(六)

多良木高校

球磨地区の

教頭主事

〃   五、二二前十時頃

~十二時頃

宿日直は教職員の職務ではないから拒否する計画をしている、その場合は教頭主事も協力すること。

第五、原告 池松彦繁の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

菊池西農業高校

同校職員

約十五名

昭三三、六、一六

県下の大部分の高校が宿日直拒否に突入しているので是非宿日直拒否をすること。

(二)

小国高校

約二十名

〃   六、四後四時半頃

~九時頃

宿日直拒否斗争を中止しないで是非拒否を続けること。

(三)

多良木高校

約二十五名

〃   五、一四後〇時四十分頃

~一時二十分頃

斗争の手段として宿日直拒否に突入する計画をしているので協力すること。

第六、原告 長谷川贇の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

熊本農業高校

同校職員

約三十名

昭三三、五、二四後一時頃

~六時二十分頃

宿日直は教職員の職務ではないから是非宿日直拒否をすること。

(二)

玉名高校

同校職員

約四十名

昭三三、六、四後五時頃

~六時半頃

玉名高校も宿日直拒否を決定し、拒否に突入すること。

(三)

玉名農業高校

同校職員

〃   五、一四後五時頃

~六時頃

宿日直は教職員の本務でないから拒否斗争に参加すること。

(四)

小国高校

約二十名

〃   五、一九後三時頃

~六時頃

勤務評定反対斗争のためには宿日直拒否斗争が必要である。宿日直は教職員の職務ではない、宿日直拒否をすること。

(五)

多良木高校

約二十五名

〃   五、二七後〇時四十分頃

~一時二十五分頃

県下の大部分の高校が宿日直拒否斗争に突入しているので本校が突入しないことは組合の団結を乱すものであり全員一致協力して突入すること

第七、原告 水谷進の行為。

番号

場所

対象者

日時

発言内容

(一)

熊本県立

鹿本高校

同校職員

約三十名

昭三三、五、二六

宿日直は職務でない、組合の拒否斗争に協力すること。

(二)

盲学校

約二十名

〃   五、二七後四時頃

組合の団結を乱さないで宿日直拒否に入ること。

(三)

御船高校

教頭、主事

〃   五、一七

高教組で宿日直拒否を計画しているので教頭、主事も率先協力すること。

(四)

菊池西農業高校

同校職員

約十五名

〃   五、二八後五時頃

~八時四十分頃

是非宿日直拒否に突入すること。

(五)

大津高校

〃(二名)

〃   五、二九後三時頃~四時頃

普通部と同一行動をとつて宿日直拒否態勢に入ること。

(六)

山鹿高校

〃約四十名

〃   五、二六後三時半頃

~三時四十分頃

宿日直は職務でない、拒否しても処罰の対象にならない、執行部を信頼して宿日直拒否をすること。

(七)

熊本工業高校

〃約五十名

〃   五、二七後五時頃

~五時三十分頃

団結して宿日直拒否に突入すること。

別表(二) 宿日直拒否の行われた学校とその期間

番号

学校名

期間

熊本県立矢部農林高校

昭和三三年五月三〇日から六月二二日まで

〃  済々黌 〃

〃   五月二七日から 〃

〃  熊本 〃

〃    〃        〃

〃  宇土 〃

〃   五月二六日から六月二一日まで

〃  八代 〃

〃    〃     六月二二日まで

〃  八代東 〃

〃    〃        〃

〃  熊本工業〃

〃   六月四日から 〃

〃  玉名 〃

〃   六月七日から 〃

〃  人吉 〃

〃   六月六日から 〃

一〇

〃  球磨農業〃

〃   六月五日から 〃

一一

〃  多良木 〃

〃    〃        〃

一二

熊本県立熊本商業高校

昭和三三年五月二七日から六月二二日まで

一三

〃  高森 〃

〃    〃        〃

一四

〃  松橋 〃

〃    〃        〃

一五

〃  熊本聾学校

〃    〃        〃

一六

〃  玉名農業高校

〃   五月二六日から六月二一日まで

一七

〃  阿蘇 〃

〃    〃     六月一一日まで

一八

〃  熊本第一〃

〃   五月二七日から六月二一日まで

一九

〃  小国 〃

〃    〃     六月三日まで

二〇

〃  荒尾 〃

〃   五月二六日から六月二二日まで

二一

〃  菊池 〃

二二

〃  大津 〃

二三

〃  御船 〃

二四

〃  甲佐 〃

二五

〃  芦北 〃

二六

〃  水俣 〃

二七

〃  天草 〃

二八

〃  牛深 〃

二九

〃  天草農業〃

三〇

〃  天草聾学校

三一

〃  山鹿高校

三二

〃  八代工業〃

三三

〃  八代農業〃

三四

〃  天草水産〃

但し右三十四校中(一)ないし(六)の学校では全組合員が宿日直を拒否しその余の学校では組合員の大部分が宿日直を拒否した。

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